古文の読み方(1)

古文を読むことは、「文字」を見ることから始まります。平安時代半ばの女性達の「手」によって書かれた「女房文学」は、「ひらがな」だけの「つづけ字」で書かれています。
濁点や句点、読点、引用符などは使われていません。
それらの写本を翻刻、翻訳した学者や研究者達が、現代の読者でも読めるようにと、多くの工夫を凝らした印刷本を私たちは読んでいるのです。
ですので、古文を読む時は、句点や読点は参考程度にとどめ、自身の気息(息継ぎ)と韻律(声調)を優先させて音読をしてください。句読点は、自分で打つようにしてください。

古文を読む時に一番大切なことは、節、句や文の<まとまり>を見つけることです。目で文字を追い、声に出して読みながら、収まりのいい<まとまり>を見つけます。そこで息を止め、間をとります。というのも、平安朝中期頃までの作品は、「声」で読まれたものが、そのまま書写されたと考えた方が正しいのです。私たちは、黙読になれていますから、書かれた「文字の思考」で本を読みがちですが、古典は「声」がベースにあると考え、声にして読むと、日本語の語感で自然と「区切り」が見つかります。
どうしても「分からないところ」は、現代語訳が手元にあれば、それを参考にして、なんとか読み続けてください。

古文が分かりにくい理由として、「一文が長い」ということがあります。でも文をよく見ると、また声に出して読んでみると<小さな文のまとまり>の羅列であることが分かります。<小さなまとまり>が他の<小さなまとまり>とくっついて、<少し大きなまとまり>になり、さらに、それは…といった感じで<大きなまとまりの文>ができあがります。このように、小さい<まとまり>が拡張していくのが、日本語の大きな特徴です。
文に至るまでの要素の順序は下記のようになります。

(文字 → 単語) ⇒ 《 文節 → 句 → 文 》

一番小さな文を『単文』と呼びます。
単文は、「主語 + 述語」の形で表されます。
「主語」「述語」の周りには様々な語が置かれて、語を飾ります。古文を読む時、それらの飾りをいったん背後に押しやって、その文の「主語 + 述語」を見つけ出すことが大切です。

  あはれ その沢に かきつばた いと おもしろう 咲きはべり

上の文は、「かきつばた」が「咲いた」という事実を伝えるものです。
つまり、「主語(かきつばた)+ 述語(咲きはべり)」が文の主張で、他の語はその事実を修飾したり、説明したり、感嘆したもの達です。

単文 → 体言+助詞用言+助動詞

この形をしっかり頭に入れておきましょう。

【ポイント】
古文を読む時に心がけることは、「主語(体言)」が現れたら、その述語である「用言」は何か。
また、述語である「用言」が現れたときは、その「主語(体言)」は何であるかを考える癖を身につけましょう。

日本語は、「状況依存性」が高い言語で、その状況において関係がはっきりしていれば、あえて主語は使いません。その方が自然なのです。その代わりに「話し手」の言い回し、敬語の使用等で相手との関係を示唆します。
このような心情は、薄くなってはいますが、現代の私たちの心の内にも共有するものです。

きょうは、ここまでにします。

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